画業の初期には道化師や娼婦などの社会的主題に絶望や怒りを織りこんだ作品を制作していたルオーは、1912年ころからキリストの受難や聖書の場面など、宗教的な題材に多くとり組むようになります。「聖顔」のテーマもそのころから描かれ始めました。十字架を背負うキリストの顔をぬぐった布にその姿が鮮やかに残されたという、聖女ヴェロニカの伝説から着想を得たことがうかがえます。
フランス、パリ生まれ。ステンドグラス職人の徒弟を経て、美術学校でギュスターヴ・モローに学びます。1903年ころから道化師や娼婦などの社会的主題を手がけ、のち宗教的な題材をとり上げるようになりました。