当館本館の陳列品の多くは民藝運動に参加した個人作家の作品が中心ですが、その大半は山本爲三郎(やまもとためさぶろう)が蒐集したものであり、美術館設立に際してそのご遺族から寄贈を受けたものです。山本はアサヒビールの初代社長を務めるなど事業家としても知られていますが、企業メセナの草分的人物でもあり、様々な芸術文化活動の後援に尽力します。中でも特に昭和初期に興った「民藝運動(みんげいうんどう)」の普及に対し支援を惜しみませんでした。

本来「民藝(みんげい)」とは「民衆的工藝」から取った造語ですが、無名の職人の手による雑器(下手もの)にこそ普遍の美が宿るとする民藝美論を昭和初期に提唱したのは柳宗悦(やなぎむねよし)でした。
 それまでは、見た目も華やかな美術工芸品に対して、日常に使用する雑器はほとんど美的価値を省みられることはありませんでした。また当時は、機械工業で大量にできた安価な生産品が出回り始め、手工業全体が衰退の危機を迎えた時代でもありました。

この民藝美論は、陶工河井ェ次郎(かわいかんじろう)濱田庄司(はまだしょうじ)バーナード・リーチ富本憲吉(とみもとけんきち)、染色家芹沢_介(せりざわけいすけ)等を中心とする個人作家達も加わって、民藝運動として展開されました。雑器の蒐集に始まり、それに宿る美を世に知らしめるための民藝館設立、また健やかな生活工藝の制作を目指した工藝ギルドの設立(上加茂民藝協団)、雑誌「工藝」の発足など、困難を伴いながらも、民藝が世に広く紹介され社会の理解を得るまでに至ったことは、評価されるべきことと言えるでしょう。

山本が日常の暮らしにもって親しく愛用したもの(現在の山本コレクション)の多くは、こうした作家との交流の中から蒐集したもの、また柳宗悦の優れた審美眼をもって、朝鮮の民族文化に対する深い理解者であった浅川伯教・巧兄弟が山本の支援により調査中蒐集した古陶磁であり、そこには共に美の理解者としての深い交友に結ばれていたことが見て取れます。

山本コレクションと民藝運動

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